モチベーションが自然に保てる頭と生活の環境づくり

なにが自分を突き動かしているのか、はっきり言葉で言い表せますか?昇進や給料アップのためにがんばる人もいれば、おいしいご飯やお酒を自分へのご褒美にする人もいます。上司に褒められたり、同僚に認められたりすることにモチベーションを感じる人もいれば、ただ新しいことに挑戦することにモチベーションを感じる人もいます。

様々な要因から人はモチベーションを得ますが、今回はそれらを「持続性」の観点から、大きく3つのタイプに分類してみましょう。

タイプ①: 外発的な、身体へ作用するモチベーション(持続性:
例:おいしいものを食べる、十分な睡眠を取る、マッサージなどで身体を癒す

タイプ②: 外発的な、心へ作用するモチベーション(持続性:
例:褒められる、愛情を注がれる、他者に認められる 

タイプ③: 内発的な、自我が生み出すモチベーション(持続性:
例:理想に近づく、自信をつける、好奇心を満たす

モチベーションを保つのは仕事をしていく上で重要です。しかし最初の2つの、外発的なモチベーションを継続的に得るには、前提条件があります。タイプ①はお金や時間がなければ得られませんし、タイプ②は自分や自分の行いに対して肯定的な人がいなければ得られません。しかも、タイプ①と②は持続性が高くないため、頻繁に摂取しなければなりません。

ある日突然、仕事量が激増して寝る時間もおいしいものを食べる時間もなくなったらどうするのでしょう?ある日突然、愛する人や家族が亡くなってしまって、褒めてくれたり愛情を注いでくれたりする人がいなくなったらどうするのでしょう?

つまりタイプ①と②に頼りきってしまっている人は、いつ心が折れてもおかしくない、危険な状況にあります。タイプ③のモチベーションは外的な要因に依存しないので、これを自ら作り出せる人は、心が折れにくい人です。そして、全タイプのモチベーションをバランスよく保てる人は健全な状態で長く仕事ができる人です。

今回はモチベーションが自然に保てる脳内と生活の環境づくりの方法をお伝えします。これを読んで、どんな困難に直面しても挑み続けられるビジネスパーソンになってください。

目次

  1. 外的要因に依存しない、自ら生み出す3種のモチベーション
    1-1.理想
    1-1-1.理想を実現しやすい幼少期
    1-1-2.理想から距離が空く青年期
    1-1-3.目標達成を理想にする社会人期
    1-1-4.目標達成だけを理想にする問題点
    1-1-5.「目標」ではなく「状態」を理想にする
    1-1-6.自分にとっての状態型理想を考える
    1-2.好奇心
    1-2-1.旅行においての好奇心とモチベーション
    1-2-2.仕事においての好奇心とモチベーション
    1-3.自信
    1-3-1.走り高跳びは自信を素にしたモチベーションで飛ぶ
    1-3-2.仕事でも段階的に自信をつけていく
  2. 外的要因に依存するモチベーションもバランス良く活用する
    2-1.心と身体の基本的な欲求を満たせる環境を作る
    2-2.承認欲求を満たせる環境を作る
  3. モチベーションが自然に保てる頭と生活の環境づくり方法のまとめ

 

1. 外的要因に依存しない、自ら生み出す3種のモチベーション

人間は欲求の成就に近づくことでモチベーションを得ます。その中でも、外的要因に依存しない種類の欲求を毎日追求できる人は、モチベーションを常に高く保っていけます。さらに、この種の欲求が抽象的であるほど、持続性の高いモチベーションが生み出せます。

人間が持つ、外的要因に依存しない欲求はたとえば以下の3つがあるとします。

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各種の欲求を素にどのようにして保てるモチベーションを生み出せるようになるのか一つずつ考えていきましょう。

1-1. 理想

「理想を実現する」という欲求は、子供の頃から誰にでも備わっています。理想は初めは非常に具体的です。具体的な理想は実現を目指しやすい半面、実現してしまったり実現が困難だと判明してしまったりすると、途端にモチベーションを失ってしまう危険を孕みます。そこで高く保てるモチベーションを生み出すカギは、以下の2つのことにあります。

① 自分の理想を抽象化する
② 実現することに意義があることを理想にはせず、実現し続けることに意義があることを理想にする

このままではあまりにも抽象的でわかりにくいので、例を通して理解を深めていきましょう。人によって理想の形は様々です。一例として幼少期に両親やテレビのヒーローを理想としていた子供が、経験を経てどのように理想の形を変化させていくのかを見ていきましょう。成長と共に理想が実現困難なものに変わっていくため遠のき、モチベーションが保ちにくい状況になっていく、という流れになります。

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1-1-1. 理想を実現しやすい幼少期

幼少期の理想はなんでしたか?おそらく、お父さんやお母さん、担任の教師、テレビで見る戦隊ヒーローや特定のアイドルであったと思います。これらは「あの人のようになりたい」もしくは「あの人に近づきたい」という非常に具体的な欲求です。

戦隊ヒーローやアイドルの真似ごとは手軽にできますし、両親や担任の教師は毎日会えます。つまり幼少期は欲求を満たしやすい状況にあるので、特に意識しなくてもモチベーションは高く保っていられます。

1-1-2. 理想から距離が空く青年期

青年になると、本当の戦隊ヒーローや特定のアイドルにはなれないことを知ります。代わりに、「歌手になりたい」「作家になりたい」「舞台俳優になりたい」「有名大学の学生になりたい」「有名企業の社員になりたい」など、普段身近にいない存在を理想にするようになります。作家や舞台俳優はもちろん、ビジネスマンと直接話すことはおろか、彼らが仕事をしているところを見かける機会も少ないため、理想に近づいている実感は頻繁にはないでしょう。このため、モチベーションが保てない青年も出てきます。勉強をがんばっても、それが理想に近づくためにやっていると実感できないと、挫折することだってあります。

とはいえプロでなくても歌を歌ったり、小説を書いてオーディションや賞に応募したりできます。オーディションや受験の結果が出る日は決まっているので、社会の仕組みが、がんばる方向性と期日を用意してくれます。社会の手助けもあり、自分の理想の言語化や実現の期日設定が容易にできるこの時期ではまだ、モチベーションを保とうと意識する必要はそれほどありません。

1-1-3. 目標達成を理想にする社会人期

有名企業の社員になったとしても歌手になったとしても、以前の自分の理想を実現してしまったので、新たに理想をイメージする必要があります。ここからモチベーションを保つのが難しくなってきます。

たとえば「テニス世界ランキングトップ5に入る」や「今の部署の部長になる」という目標は具体的で、目指しやすい目標です。しかし同時に、席が限られた、達成しにくい目標でもあります。これらのように、目標達成を理想としてしまうとどうなるでしょう。努力を続けていたとしても、いつまで経っても理想が実現しなかったとしたら、いつか挫折してしまいます。

また、このような目標を達成し続けても、テニス世界ランキング1位になってしまったとしたら、組織のトップになってしまったとしたら、その先はどうするのでしょう?「また新たな目標を立てればいい」と思える人は挫折したりはしないでしょう。しかし目標達成を理想としてしまうと、達成した時に目標を失いその都度モチベーションが下がる、という現象を繰り返し体験することになります。

心と身体が丈夫なうちは目標達成を理想とするのが最も効率的にモチベーションを生み出すでしょう。しかしいつまでも心が折れないトップビジネスパーソンになるためには、違う種の理想を持つ必要があります。

1-1-4. 目標達成だけを理想にする問題点

これまで、がんばればいつか達成できるかもしれない目標を理想としてきたので、理想を実現する度に新たな目標を立てる必要がありました。このモチベーションの生み方にはさらに別の問題があります。

目標の達成が理想ということは、その瞬間自らが幸せな状態にあると言えます。しかしその目標を目指している過程は、必ずしも自らが幸せな状態ではないのです。

例として、作曲を生業としているKさんという人がいるとします。彼の理想はミュージシャンとしてとにかく有名になる、ということです。つまり目標はヒットソングを生み出すことになります。理想の実現のために、日夜作詞作曲、レコーディングや曲の編集に明け暮れます。

一曲作り、音楽配信できる状態まで仕上げるのに2カ月かかるとします。曲が完成し、ファンの手元に届き感想をもらう瞬間は何事にも代え難い喜びです。しかしそれまでの2カ月の間行っていた地道な作業は苦痛以外のなにものでもありません。売れるかも、そもそも人に求められているかもわからない物の質を追求するのは不安との闘いです。

Kさんは目標を達成した瞬間は幸せですが、それまでの長い期間は幸せを感じていません。幸せを感じていない時間の方が圧倒的に多いため、このサイクルをいつまでも繰り返すのは困難です。

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1-1-5. 「目標」ではなく「状態」を理想にする

常に幸せな状態で仕事ができて、結果的に目標を達成できたとしたら、素敵なことですよね?

これは実現することに意義があることを理想にするのではなく、実現し続けることに意義があることを理想にすることで叶います

こうすることで、理想は目指す「目標」ではなく、実現し続ける「状態」に変わります。ここからは便宜上、前者を「目標型理想」、後者を「状態型理想」とします。

状態型理想を持つということは、理想を常に実現し続けている状態にあるということです。さらに、幸せな状態、つまりモチベーションが高い状態で仕事をするので、結果は自ずとついてくる、という状態です。

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前述のKさんの理想は目標型理想ですね。これを基に、彼の状態型理想はなんであるか考えてみましょう。たとえば以下のような、2つの理想の形が考えられます。

以前の目標型理想: ヒットソングを生み出し、ミュージシャンとして有名になる。
現在の状態型理想: 自分の人間性や人格を、音楽という媒体を通して表現し続ける。

状態型理想はかなり抽象的なものであることがわかると思います。Kさんはこの状態型理想を、自分が何者であるかという事と、聴き手に音楽を通してどう伝えるのがいいのかを考えていく事で、毎日実現しています。毎日の施行錯誤や地道な作業はまさに理想を実現している状態なので、目標を失ってモチベーションが大きく下がるということはありません。「有名になる」という結果は、あくまで副産物として捉えます。

このように理想の考え方を変えることで、目標達成の度に上下するモチベーションだけではなく、常に高く保たれるモチベーションも持つことができます。

1-1-6. 自分にとっての状態型理想を考える

もし現在、あなたが目標型理想を持っていたとしたら、状態型理想も持てないか考えてみましょう。理想の形は人それぞれなので、自ら考えるしかありません。

ひとつの方法として、理想の人物のようになることを目標型理想として考え、そこから状態型理想を見出してみましょう。以下の手順を踏んでみてください。

① 理想の人物や、尊敬する人物の素養を思い浮かべる。または、尊敬できない人物やその人の素養を思い浮かべる。
② なぜその人やその素養に惹かれるのか、なぜ惹かれないのかを考える。
③ 考えたことを踏まえて自身の幸せな状態を、会社のビジョンのような抽象的な一文にまとめる。

ThinkstockPhotos-494280825ヒントとして、いくつかのケースを見てみましょう。

 

ケースA

Mさんにとっての理想の人物は、現代を生きるマーチ卿というイギリス貴族です。マーチ卿は祖父が建てたグッドウッドモーターサーキット(祖父の道楽のために建てられたため、後に運営が滞り30年近くも閉鎖されて有効活用されていなかった)を、自らの趣味でもあるカーレース・イベントを企画・運営することで復活させました。また自ら企業を立ち上げ、家が代々受け継いできた土地を農場、ゴルフ場、航空学校などの様々な用途に使用し、運営面でも成功させた上で地域の発展などに役立てています。Mさんは、マーチ卿の、自らがやりたいことが他者に感謝され、なおかつ生計を立てることに結び付いている生き様に惹かれています。

Mさんの目標型理想: マーチ卿のように好きなことで、なおかつ他人に感謝されることを仕事にする。
Mさんの状態型理想: 自分が幸福であることが、周りの人の幸福でもあり、それが仕事に結び付いている状態。

ケースB

Iさんは理想の人物が誰であるかを考えた時に、明確なロールモデルが思い浮かびませんでした。代わりに、母親の、歳を取っても元気である部分に惹かれると思いました。それまで一度も働いたことがないにも関わらず、50を過ぎてから資格を取り、職に就いた母を尊敬しています。その半面、仕事も家事もなにもかも一人でこなそうとし、結果的に上手く両立できていないところを良くないと感じています。人間には許容量に限界があり、できないことがあったら人を頼るのも大事だと感じています。

Iさんの目標型理想: 母親のように歳を取っても元気でいて、なおかつ無理をしない人になる。
Iさんの状態型理想: 仕事と家庭を両立するに当たって、心身のバランスを保ち続けている状態。

ケースC

Sさんには特定の理想の人物はいません。その代わり、憧れる人物が何人もいます。それら全ての人物に共通することは、それまでなかった商品やサービスを考案し、新たな事業を興している、ということです。真珠の養殖とブランディングにより成功を収めた実業家の御木本幸吉やアイディアキッチン用品で富を成す主婦など、これまで無価値だったものに価値を見出し、実際に事業に変換することができる観察眼と行動力のある人に魅力を感じます。

Sさんの目標型理想: アイディア商品を考案し、特許を取って富を成す。
Sさんの状態型理想: 色々な事象を観察し、新しい価値を見つけ出せないか考え続けている状態。

自身の理想を定義できましたか?目標型と状態型、どちらか一方を持つより、両方持った方がいいことは言うまでもありません。

1-2. 好奇心

好奇心が満たされたと思う時はどのような時ですか?本の表紙やタイトルに惹かれて読んでみて、著者が言っていることに「なるほど」と思う時かもしれません。行ったことのない国に行ってみて、現地の空気や生活、文化に触れた時かもしれません。好奇心が素となるモチベーションは2通りの方法で生まれます。

① 「なかった」知識や発想が、「ある」状態に変わる瞬間の達成感
② 達成感が得られるまで脳を動かす楽しさ

まず身近な例から好奇心の正体を理解し、その後ビジネスの場面で好奇心がどうモチベーションを生み出すのかを見ていきましょう。

1-2-1. 旅行においての好奇心とモチベーション

行ったことのない地域や都市に行く際、どのようなことを見たり体験したりすることを期待しますか?旅行の醍醐味は非日常を楽しむ他に、期待を抱き、期待が膨らみ、期待の答え合わせをすることで好奇心を満たすことです。これは前述の、脳を動かす楽しさと、「なかった」が「ある」に変わる達成感に相当します。

たとえば一度も行ったことのない都市にこれから行くとしましょう。5日間の滞在期間の中で、なにを目にすることを期待しますか?以下の例のように、3つ挙げてください(この例では行き先をニューヨークとします)。

① ブロードウェイ・ミュージカル
② 自由の女神
③ セントラル・パーク

では次に、以下の例のように出発前に持つイメージを言葉にしてみてください。これにより最初に期待を抱く段階を再現します。

① 大勢の役者が派手なステージで高い歌唱力やダンス技術を披露する
② てっぺんまで登ってニューヨークの街を一望できる
③ 広大な芝生があって、近所の人がジョギングしている

最後に以下の例のように、目の当たりにする直前に考えるであろうことを言葉にしてみてください。これにより期待が膨らむ状態を再現します。

① 開園直前: どんな風に始まるのだろう?主役はいつ登場するのだろう?主役はどんな人なのだろう?
② 自由の女神を登る直前: エレベーターで昇るのだろうか?どんな景色がどのくらい遠くまで見えるのだろう?
③ セントラル・パークに向かう途中、緑が遠くに見えてきた時: 芝生の上で寝たら気持ちいいのかな?何人くらいジョギングしているのだろう?

 

実際に現地に行った際に答え合わせをするとどうなるのか見てみましょう。当初の期待に比べてどのような違いがあるかに注目してください。

① ステージから遠い席に座ったにも関わらず、歌もダンスも演出も迫力があった。主役の歌唱力は圧倒的だった。
② 300段以上の階段を上った。上りは辛かったが、その分てっぺんで見た景色は壮観だった。
③ 芝生で昼寝している人が大勢いたにも関わらず、スペースにたっぷり余裕があった。上半身裸でジョギングする男性が多かった。

このように、答え合わせをする際に、期待と合致することもあれば、期待とまるで違ったり、期待を上回ったりすることもあります。

期待を抱き、期待が膨らむまでの過程は、身体を動かすのを楽しいと感じるのと同じように、脳を動かすのを楽しいと感じている状態です。期待と結果の答え合わせは、「なかった」知識や発想が「ある」状態になる達成感の一種です。「楽しい」「もっと知りたい」と思うということは、好奇心を素にモチベーションが生まれていることになります。クイズ番組が世界中どこでも人気なのは、まさにこれら2種類のモチベーションが生み出されているからではないでしょうか。

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ではこれを踏まえて、ビジネスの場面で好奇心がどのようにモチベーションを生み出すのか見てみましょう。

1-2-2. 仕事においての好奇心とモチベーション

ビジネスの場面で好奇心によって生み出されるモチベーションの代表的な例として、自ら施策を考えるケースを取り上げます。施策を考え、実行する時に行う次の4つのことは、前述の旅行でモチベーションが生み出される状況と似ています。

① 旅行先で目にしたいことを思い浮かべ、ネットやガイドブックで調べる ≈ 問題や状況を分析する
② どんな場所・物かイメージし期待を抱く ≈ 仮説を立て、施策を考える
③ 実際に目の当たりにする ≈ 施策を実行する
④ 期待を裏切られたり、凌駕されたりする ≈ 結果が出る

10代の女子学生に人気のあるファッション雑誌を制作している出版社があるとします。読者目線では市場で一定の地位を確立しているものの、広告主離れという問題を抱えているとします。「雑誌の売上部数からして読者からは人気のある雑誌であることは明白なのに、広告掲載を控える企業がいるのはなぜなのか?」と疑問に思っている新任編集長Aさんの話を例にして、好奇心からモチベーションが生まれる仕組みを、順を追って見てみましょう。

① 問題や状況を分析する

Aさんはまず、これまでの広告主に出稿を見送った理由を尋ねてみようと考えました。数社に問い合わせたところ、多くの担当者が「費用対効果が安定しない」ことを理由として述べました。費用対効果が低いというのならいざ知らず、安定しないとはどういうことなのでしょう?

②仮説を立て、施策を考える

Aさんは、化粧品やファッション関係の商品の広告掲載後、10代の女子学生の購買につながる時とつながらない時があることから、以下の可能性を考えました。

仮説A: 広告自体の質がまちまち
仮説B.: 10代女子学生が大半である読者のお小遣い事情が関連している

これらの仮説の真意を確かめたいと思い、回答者に特典をプレゼントをする形で、Aさんは読者アンケートを行うことにしました。

③施策を実行する

Aさんは別件で制作し在庫が余っていたノベルティーグッズを特典として、抽選で200名に当たるプレゼント付きの読者アンケートを作成しました。アンケート内容は以下の通りです。

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もし仮説Aが正しければ、投票がほとんど入らない広告があるはずです。もし仮説Bが正しければ、「月によって異なる」にたくさん投票が入るはずです。早く結果が見たいという思いと共に、アンケート集計の日を待ちます。

④結果が出る

アンケートの結果、以下のことがわかりました。

■  アンケート回答者は売上部数の50%に上った。特典欲しさで回答してくれたにしても、熱心な読者が大勢いることが確認できた。

■  問1に関しては、投票が入った広告はほぼ均等に分かれた。どの広告も好意的にとられていたことが確認できた。

■  問2に関しては、「月によって異なる」が圧倒的に多かった。これにより、女子中学生や高校生は月々定額のお小遣いをもらっていたとしても、使途がファッション以外に多様で、月々にファッションに使える額が安定していないことが判明した。

結果的に仮説Aは間違っていたようです。対して仮説Bは予想通りでした。熱心な読者が多いにも関わらず広告の費用対効果が安定しないのは、そもそもターゲット層の消費の使途が(おそらく友達付き合いなどの理由で)一定ではないからです。

そこで、Aさんは大胆な策を思い付きます。今確保している熱心な読者の成長と共に、雑誌のターゲット年齢層を上げていくのはどうか、と。読者がアルバイトを始めたり就職したりして自らお金を稼ぐようになるにつれ、お金がより大事なものに代わり、使途の多様性は軽減されていくでしょう。時間はかかるものの、成長した読者をターゲットにすれば、広告の効果も安定していくのではないか、と考えました。この施策の成否を確認したいという好奇心が、Aさんを再び突き動かしていきます。

Aさんのように自ら考えた施策が効果的であるかどうか、またどうすれば改善できるのかを考える時、好奇心を素にしたモチベーションが生まれます。さらに、施策が成功した時に、今まで効果があるかどうかわからなかったことが、効果があるということがわかります。つまり「なかった」知識が「ある」状態に変わり、達成感を得られ、モチベーションに変わります。仕事にクイズ要素を見出すことで、仕事の中で好奇心が満たされるようにすると良いでしょう。

1-3. 自信

成功体験をすると、自信がつきます。たとえば初めて一人で海外旅行に行ったとしましょう。言葉が通じない国であるにも関わらず、ツアーなどを利用せず、自分の力で宿や食べ物を確保していくにつれ、「今まで出来ないと思っていたことが出来た」という実感が増していき、自信がつきます。その後、今度は友人数名と海外旅行に行ったとしましょう。前に一人で現地の人とのコミュニケーションを何度も成功させたという自信から、そういった経験がない友人たちの代わりに率先して宿を取ったり、レストランで注文してあげたりするでしょう。このように自信を素にモチベーションが生まれることもあります。ただ、これには以下のような条件があります。

① これからすることと同じ、もしくは似た成功体験を経験している。
② これからすることは簡単には成功しないことである。

両方の条件に当てはまると自信を素にモチベーションが生まれ、当てはまらないとモチベーションが逆に失われるということをまず説明します。その後で、これがビジネスの場面でどのように起こるか見ていきましょう。

1-3-1. 走り高跳びは自信を素にしたモチベーションで飛ぶ

ギリギリ出来るか出来ないかわからない絶妙な難易度の挑戦に、「やってみたい」とモチベーションを感じる人は多いのではないでしょうか。走り高跳びで自分の身長より30cm低いバーを跳び越した成功体験があるとしたら、次に挑戦したいのは以下のうちどれですか?

挑戦A: 10cm下げて、自分の身長より40cm低いバー
挑戦B: 再び自分の身長より30cm低いバー
挑戦C: 10cm上げて、自分の身長より20cm低いバー

挑戦Aはもはや挑戦ではないので、やりたがる人は少ないでしょう。挑戦Bを選ぶ人は、一度しか成功したことがないことをもう一度成功するか試してみたい、という気持ちからモチベーションを感じています。挑戦Cを選ぶ人が大半でしょう。Cを選らんだ人は、まだ成功体験はないものの似た成功体験を経験している自信があるので、自信をより大きなものにできないか試してみたい、という気持ちからモチベーションを感じています。

このことから、「出来るか出来ないかわからない絶妙な難易度」は自信を素にしたモチベーションを引き出すことができます。「出来ることがわかりきっている低すぎる難易度」と「出来ないことがわかりきっている高すぎる難易度」は逆にモチベーションを奪います。

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1-3-2. 仕事でも段階的に自信をつけていく

仕事でも絶妙な難易度設定は大事です。新人の保険の営業がいきなり「1カ月以内に10件契約を取ってこよう」と到底出来そうもないことを目標にするより、「最初の1カ月、まずは1件契約を目指そう」と考えた方がモチベーションを保てます。それが出来たら、「次は1カ月2件を目指そう」と高跳びのバーを段階的に上げていくかのように難易度を調整し、少しずつ自信をつけていくことができます。

注意しなければならない点が、この難易度設定の基準です。安易に社員の平均や業界の平均を基準にしてしまうと、以下のような問題が起きます。

① 自社社員のパフォーマンスの平均が、(今の)自分の能力より遥かに上だとしたら、そこに合わせようとするのは2mの高跳びをしようとしていることと同じです。

② 自社社員のパフォーマンスの平均が、自分の能力より下だとしたら、そこに合わせようとするのはバーを下げることと同じです。

①は誰にでも起こり得ることです。別の部署へ異動したら専門知識が周りの社員ほど無い状態に陥ります。会社の公用語が突然英語になったら、言語に関して周りより劣っている状態に陥る可能性もあります。海外赴任をしたら、たとえ言語能力が高かったとしても、現地の文化や習慣に関して無知の状態に陥ります。そのような場合にも、無理をしてすぐに追いつこうとするのではなく、幾度の新たな成功体験を経て段階的に自信をつけていくことが重要です。無理をしても成功体験にこぎつけず、自信が一向につかないため、会社を辞めたいと思い始めてしまう可能性もあります。

パフォーマンスもモチベーションも高い人材は言うまでもなく貴重ですが、パフォーマンスが現在は低くても、段階的に向上し、モチベーションを保ちつつ長く働いてくれる人材も貴重です。

2. 外的要因に依存するモチベーションもバランス良く活用する

これまでのモチベーションの素は、外的要因に依存しない、自らコントロールできるものばかりでした。しかし身体が人間の一部であり、人間が感情を抱く生き物である限り、外的要因にモチベーションが影響されるのは避けられません。自らモチベーションを生み出し続ける傍ら、睡眠や食べ物などからモチベーションを得るのももちろん効果的です。

理想・好奇心・自信が長期的なモチベーションを生み出す一方で、他の欲求は短期的なモチベーションを生み出します。

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両種のモチベーションをバランス良く活用することが大事です。

2-1. 心と身体の基本的な欲求を満たせる環境を作る

たとえば2年がかりのプロジェクトを発案し、さらに運営を任されている管理職の社員Bさんがいるとします。Bさんの長期的モチベーションは以下の通りです。

理想: 2年以内にプロジェクトを完遂させ、それまでの過程でプロジェクトマネジメント能力を磨いていく
好奇心: 自分が考えた施策が成功するか確かめたい
自信: 以前、規模は小さかったものの同趣旨のプロジェクトを成功させた

Bさんは強い意志を持ってプロジェクトに取りかかります。とはいえ、数か月ごとに小さな成功体験がなければ元からある自信は次第に失われていってしまうかもしれません。身体は疲れますし、管理職なので残業代も出ません。心も身体もあまりに疲弊すると、好奇心を満たそうという発想を持つ余裕もなくなってしまうかもしれません。

睡眠をしっかり取り、同僚や友人と飲みに行ったり外食したり、たまには旅行に行くのも大事です。プロジェクトリーダーや管理職なら、自分とチームがそういった基本的な欲求を満たせる余裕や時間を確保できるようにしましょう。

2-2. 承認欲求を満たせる環境を作る

他人に褒められたり、実力や考えを認められたりすると、承認欲求が満たされます。心を健全に保つために承認欲求の成就は不可欠なので、それができる環境に身を置いたり、自ら作ったりすることが大事です。感謝されたりグチを聞いてもらったりと、方法はたくさんあります。しかし残念ながら社会の仕組みが成就を妨げます。

前述の通り、承認欲求(厳密に言うと「他者承認」という欲求)を満たすには、自分に対し肯定的な他者が必要です。人間社会では権力を持てば持つほど、否定的な他者が増える傾向があります。政治家を見ればわかる通り、取り沙汰されるのは失言や施策の汚点ばかりです。日本の首相に至っては、任期中に「国が壊滅しなかった」という功績に対して誰も褒めてくれません。それでもリーダーとして辞めずに続けるということは、肯定的な他者に頼らずにモチベーションを保っていける、常人には真似できない強靭なメンタルを持っているということになります。

首相でなくても管理職に就くと、職場では褒められる機会が減るでしょう。そこで普段の生活の中で承認欲求を満たしやすい環境を作る2つの方法があります。

① 褒められたり認められたりする場を仕事の外に用意する

たとえば週に一回習い事をして、仕事以外のことで先生やコーチにがんばりを褒められる場を作ると良いでしょう。定期的な勉強会などを開いて意見交換の場を設けるのも効果的です。

② 他者承認に対する期待値をゼロにする

仕事の場において、他者に褒められることは一切ないと考えます。すると、万が一褒められるなどのちょっとしたことで喜びを感じ、モチベーションにつなげることができるようになります。

3. モチベーションが自然に保てる頭と生活の環境づくりをする方法のまとめ

これまでお伝えした、環境作りの方法をまとめます。

■  目標型理想だけではなく、状態型理想も持つ

■  仕事にクイズ要素を見出すことで仕事の中で好奇心を満たす

■  段階的に自信をつけられるよう仕事の難易度設定をする

■  心と身体の基本的な欲求が満たせる余裕と時間を確保する

■  仕事で承認欲求を満たすことを期待せず、仕事の外に褒められたり認められたりする場を用意する

いかがでしたか?今回は自身のための環境作りをテーマとしましたが、部下や会社全体のモチベーションを上げたい場合にも同じことが言えます。無理なくモチベーションを保つことで仕事場での笑顔が増えることを願っています。