あなたの会社に必要なグローバル人材を定義する簡単な方法

「グローバル人材」とはどのような人材を指すのでしょうか?

相次ぐ企業のグローバル化に伴い多くの企業が海外市場での競争の中で活躍できる「グローバル人材」の獲得や育成に力を入れており、日系企業の人事部にとっても人材獲得は急務です。

ではグローバル人材とはどのような人材でしょうか?

「グローバル人材」はなぜ「ゼネラリスト」や「スペシャリスト」のようにパッとイメージがわかないのでしょうか。
それは単純に、グローバル人材に問われる資質があまりにも多様だからです。下記の図が、「グローバル人材に必要である」と言われる主な能力を全てまとめたものです。

グローバル人材1

いかがでしょうか?
一目で「この全ての資質を持っている人がいるわけない」と思いませんでしたか? その通りです。これら全ての資質を併せ持つ人材はほとんどいません。 これらの能力全てをグローバル人材に必要な定義としてしまうと、そもそも存在しないものを追い求めることになってしまうのです。

企業はここまでオールマイティーな人材を求める必要はありません。 なぜならグローバル人材とはその会社ごとに最適な定義があるからです。

たとえば世界の貿易の拠点に社員を海外赴任させる商社と、ベトナムにプログラム開発をアウトソーシングする日本のソフトウェア会社とでは、グローバル人材の定義は異なります。

グローバル化を目指す企業はまず自社にとってのグローバル人材がどのような人材であるか明確に定義する必要があります。
定義を明確にすることによって自社に最も適した研修メニューを立て、次世代をになう人材を最短で育成していくことができるのです。

ではどうすれば明確な定義ができるのでしょう?

それはあなたの会社で、すでにグローバルで活躍している人材に答えがあるのです。
実際のグローバルビジネスを通して肌で学んだ経験・知識をその人材から共有してもらうことにより、その仕事や企業におけるグローバル人材像が必ず見えてきます。

それでは日本の大手ソフトウェア開発会社に30年以上従事したプロジェクトマネージャーの事例を通じて、彼の会社におけるグローバル人材を定義してみます。

グローバルで活躍するソフトウェア開発のプロジェクトマネージャー

大手ソフトウェア会社のプロジェクトマネージャーのUさんは、モバイル端末用ソフトウェアの企画、システム設計、プログラミングに運用テストまでのプロセスの全てを監督。自社と協力会社併せて総勢300人のプロジェクトチームを束ねています。

協力会社は日本のみならず、アメリカ、オーストラリアからベトナムなどのアジア圏の国々が含まれ、各部署とのミーティング・協力会社との電話会議は一日あたり20の会議に出席することもあり、超がつく多忙な日々です。

そんなUさんがプロジェクトマネージャーとして大切にしているのは説得力です。

「一番重要なのは説得力です。多様な国籍・多様な会社の人が働く現場では、物事の考え方や感受性もバラバラです。“阿吽の呼吸”は通用しないので相手に“なぜその仕事をやる必要があるのか?”をしっかり理解してもらう事が重要なんです。だからこそプロジェクトの企画の段階で要求する仕事の質とスケジュールについて相手が納得してくれれば、あとは自然とうまく行くのです。」とUさんは語ります。

異文化なメンバーの中でも普遍の価値は「健康」である。

ではUさんが実際にとったマネジメント手法を見ていきましょう。

国によって「期限」の捉え方は様々です。
日本ではクライアントと取り決めた期限は何においても“絶対”です。しかしアジア圏においては期限を“努力目標”として捉える地域もあります。

例えばベトナムでは期限を守るよりも仕事場の雰囲気を良好に保つことを優先する文化があります。

このような文化の違いを考慮して、Uさんはプロジェクト開始時に全メンバーにこう宣言しました。
「このプロジェクトの中で一番大事なのは皆さんの健康状態です。過密なスケジュールの中で健康を損なって欲しくはありません。そして期限も絶対に遅らせる事もできません。しかし人を増やすことはできます。きつい!つらい!と思ったら遠慮なく私に言ってください。チームに無理がないように人員を調整します。」

つまりUさんは

・人員は調整できる
・期限は調整できない

この点を明確にした事で、スケジュールデットライン間近に発生しがちなトラブルを未然に防ぐことができたのです。また、プロジェクトマネージャーが健康を気にかけてくれていることを知ることでメンバーは安心して働けますし、モチベーションを保つことができます。健康には普遍的な価値があります。どの国籍の人でも、「プロジェクトメンバーの健康管理には気をつける」というメッセージはポジティブに受け取られます。

英語力は“そこそこ”で十分

グローバル人材2Uさんは他国の協力会社との電話会議の際、いつも最初にこう問いかけるそうです

Aren’t you tired?”「疲れていませんか?」

プロジェクトのはじめから一貫してチームの健康状態を心配していることを表すためでもありますが、この質問ひとつで進捗状況も聞き出せるのです。高度な英会話能力は必要ありません。返ってくる内容も日常会話程度の英語です。

A little bit. We were working a little overtime every night last week.
「少しだけ、連日残業が続います。」

このシンプルな答えから、「ああ、次の工程はもっと大変だから、もう一人くらい投入したほうがいいかもしれないな」などという考えに容易に至ります。

また、仕事内容の詳細は社内でいつも飛び交っている、世界共通のプログラミング言語が会話の大部分を占めます。たとえば以下の文を見てみると:

■日常会話の英語
Please use a pen.”「ペンを使ってください」

■プロジェクトで使う英語
Please do a responsive design test.” 「レスポンシブ対応テストをしてください」

話している内容は全くちがいますが、文法構成は同じなので、前者の初歩的な英文が作れれば、後者を英語で言うことができるのです。

Uさん自身、英語に自信はないそうですが、プロジェクトマネージメントにおいてはさほど不便を感じなかったそうです。英語力は強いに越した事はないですが、高レベルである必要がないのです。

Uさんのソフトウェア開発会社におけるグローバル人材の定義

これまでの話をふまえて、Uさんが勤めるソフトウェア開発会社が求めるグローバル人材の定義をしましょう。

この会社におけるグローバル人材は:
1.全プレイヤーが納得して仕事に取り組めるように働きかける説得力利害関係者マネジメント能力を有する。
2.プロジェクトの初めに期限などの基本原則をチーム全体が共有できるように、わかりやすく伝える明確性コミュニケーション能力を有する。
3.多くの組織をひとつの目標に導くリーダーシップを有する。
4.文化のちがいにかかわらずチーム全体のやる気を保つ普遍的なモチベーション管理能力を有する。
5.会議や電話会議という限られた場面で各チームの実情を読み取る把握力を有する。
6.文化のちがいから起こり得るトラブルを予測し適切に対処する異文化理解がある。
7.世界共通の普遍的な価値を特定し、それに基づいて目標や指針の論理を展開できる論理的思考を有する。

グローバル人材2

これがこの会社に最適な、グローバル人材の定義です。

あなたの会社でのグローバル人材の定義

このように、多国間プロジェクトを束ねたマネージャー本人にインタビューを行ったように、社内でグローバルに活躍している人材から直接具体的なプロジェクトの話を聞くことで、あなたの会社におけるグローバル人材像がはっきりとわかるのです。 そこから具体的にどのような能力があると業績につながるのかがわかり、採用する人材像がより明確になったり、効果的な研修プログラムを組むことができます。

あなたの会社は、適切なグローバル人材を育てることが出来ていますか?これを機に、もう一度検討してみてはいかがですか?